この記事はグリーンズで発信したい思いがあるライター、ブロガー、研究者の方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方はこちらをご覧ください。また、この記事はgreenz.jpライター磯木淳寛さんによる「ライター・イン・レジデンス」の一環で制作された記事です。詳しくは記事の最後をご覧ください。
3月某日早朝。霜が降りるほどにキーンと冷たい空気に、春の明るい日差しが射す。
背景には黒いシルエットの立山連邦。朝焼け色の穏やかな海の水面を滑るように、一艘の漁船が港へ入ってきた。この季節の氷見の港の風景。
今回取材させていただいた番匠光昭さん(70歳)は、漁船をつくる造船所の三代目。持ってきてくれた手作りの木造船模型は「この日が初お披露目」とのことでしたが、ちょうど、船の誕生を祝う進水式にもっとも縁起が良いという“友引”の日でした。番匠さんにとっては模型であっても、技術や思いがつまった一艘の船なのです。
高度経済成長という時代の中で新しい技術が導入され、船造りは「職人の仕事」から「工場の仕事」へ。やがて氷見の船大工が姿を消していく中でも、番匠さんは失われてゆくものの存在に気付き、技術や道具を守ってきました。今では富山県でほぼ唯一の船大工となりましたが、これからの時代を生き抜いていく私たちのために、昔の知恵や技術を残してくれています。 (さらに…)